私とお酒との出会い

私とお酒との出会いは、大学に入学した春だった。

高校生までは、頑なにお酒を飲むことを拒み続けてきた私であった。真面目であった私は、部活の打ち上げでも頑なに拒み続けてきたのです。

しかし、大学生になりサークルの新入生歓迎コンパとなると、流石に断れなかった。勧められるままにお酒を飲んだ。

正直ぜんぜん美味しくなかった。一方、私の気持ちとは関係なく、周りは盛り上がっている。一気飲みをする者もいる。

心の中ではもう限界。昔からそういう光景を冷めた目でしか見ることのできない私は、余計にお酒から遠ざかった。

そのうち新入生歓迎コンパからも足が離れていった。そんなある日のことであった。

あることがきっかけで、山登りに一緒に行った先輩からお酒を飲まないかと誘われる。正直お酒が嫌だったから、断った。

でもその先輩は少々強引。結局それに押されて、何人かでその先輩と飲むことに。最初は「お酒なんて飲むふりだ。」と思っていた。ところがだ、

その先輩が開口一番いわく。「今日そろえたお酒は、いいものばかりだ。飲みたくない奴は飲むな。もったいない。」

私は思った。「は?あんたが誘ったんじゃ。。。」

先輩が続けて言う。「ただ、今回は初めての顔合わせだから、特別に飲むことを許可する。今回のメンバーの中には酒が嫌いな奴もいるようだから、 無理には飲ませない。もったいないから。ただ、何事も食わず嫌いというのは良くないんじゃないかな。」 「それでは各自、飲み会を楽しもう。」

という先輩の言葉で飲み会が始まった。参加者はほとんどが、私と同期の一回生。最初の一杯目は皆、ビールだった。

乾杯の直後に先輩がまた言った。「このビールはただのビールじゃないぞ。一番いいビールだ。ヱビスといって日本で一番うまいビールやねん。」

私は「へー、そうなんだ。」くらいの気持ちで、8割がた仕方ない気持ちで口にしていた。残りの2割はというと、それは先輩の言葉が効いた。 「何事も食わず嫌いは良くないんじゃないか。」という一言だ。これは私の心に響いた。

それがきっかけで、口を開いた私であったが、そのとき私の直感は何かを感じ初めていたようだ。

宴も始まりから時間が経ち、皆さんそこそこいい気分になっていた。私も少しばかり、そのような感じがしていた。

そのとき、先輩が私に聞いてきた。「どや?美味しい?感想は?」。正直わたしは戸惑った。なぜなら私のお酒に対する意識は「悪」であったから。 しかし、何も答えないわけにはいかない。そこでとりあえず、「美味しいです。」とだけいった。ところが、先輩の追及は続く。 「どのようにおいしいんや?表現しなきゃ、大学生じゃないやん?」。正直厳しかった。私には筋が通った主張に聞こえた。そこで私は少し思い出すことにした。 この前に飲んだ新入生歓迎コンパでのビールの味を。そうした瞬間、無意識のうちに次の答えたかえった。「ヱビスビールの方が、こくがあるような気がします。」 作った答えではなかった。素直にそう感じたから、そう答えた。するとその答えは良かったようで、先輩は「ほー、よかったねぇ。まぁ楽しんでよ。」といって去って行った。

その後は先輩との絡みもなく、飲み会は無事終了した。実は、これが私とヱビスビールとの出会いであったのだ。

数日後、同じ先輩から再び飲み会に誘われた。しかし、断った。するとその先輩曰く。

「そうか。嫌ならいい。でも残念だなー。今回はとびきり美味しい日本酒があるというのに。あほな奴だなぁ。こんなにいいチャンスを逃すとは。」

この言葉も私の心に響いた。「あほな奴だなあぁ。こんなにいいチャンスを逃すとは。」どうやら私は挑戦的な言葉に弱いようだ。

しかし、よくよく考えるとこの言葉も筋は通っているのである。いいお酒があり、しかもお金は払う必要がない。確かに私はお酒が嫌いだが、ただで良いと謳われているらしいお酒を飲むことができるのだから、「食わず嫌いはよくない」

してやられたような気もしたが、けっきょく日本酒を飲みに行くことに。

そこで出会った日本酒がこれ。「出羽燦々誕生記念(本生)」である。

あの時の感動は忘れられない。まるで目の前の世界が開けるような感じだった。

飲み会が始まると先輩が言ったのだった。「これは素晴らしい日本酒だ。まずは、色と香りから楽しむのが日本酒の楽しみ方だ。

私は言われるがままにそうした。その瞬間のことであった。日本酒が入ったおちょこを鼻に近づけた瞬間、私の周りが一面花畑で囲まれた気がした。優しく私を包み込んでくれるような香り。あれは忘れられない。

そしてそれを口に含んだ時、言葉は意味を成さなくなる。あの感動は伝えられない。私だけの宝物だ。

この衝撃的な瞬間が、私と日本酒との出会いだった。

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